「悪文」を読み解く良作!
ライティングスキルを向上させるために必要なことは他人の文章をできるだけたくさん読むことですが、優れた文章だけ読んでいてもなかなか効果はあがらず、優れた文章と並行して悪文を読んでいくことも大切です。しかし、出版されている本に記載されているのは厳しいチェックを経た優れた文章ばかりなので、なかなかライティングスキルの向上につながる悪文に出会うことはできません。そこで私がおすすめしたいのが、「悪文」です。この本にはその名のとおり、悪文ばかりが掲載されています。
この本が取り上げる「悪文」は判決文!
「法律」は私たちの身近にあるはずなのになかなかその内容を理解できないものですよね。「結婚届を提出すれば夫婦となれる」という意味でも法律には「婚姻は、戸籍法 (昭和二十二年法律第二百二十四号)の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる」(民法739条1項)と小難しく書かれています。もっとも法律以上に小難しいのが、一昔前に書かれた判決文です(現在では「市民に開かれた司法」が意識されているため、随分分かりやすい文章となっています)。
なぜわかりにくいかといえば、一文がとにかく長いということが理由として挙げられます。一文が1000字続くということも珍しくはありません。これだけ長いと論理展開をどのように読み解いていけばいいのかさえもよくわかりません。この難解さは実際に手に取ってみていただければすぐわかってもらえるでしょう。次に法律や先例(これまでの判決)など専門的なことを取り扱っていることが理由として挙げられます。元々よくわからない用語を小難しく書かれれば混乱して当然です。
この本には難解な判決文が多数掲載され、どのような点でその判決文が悪文といえるのかについて丁寧に説明されています。
ライターとして自省を促される一冊!
判決文というと法律を学ぶ学生や法律を生業とする人にしか縁のないものと感じられるかもしれません。しかし、この本は文章を書く人なら誰もが一読すべき書物といっても過言ではないといえるでしょう。
まず「長すぎる文」や「耳慣れない言葉を含む文」などの悪文を目にしたときに人々がどう感じるのかを知ることができます。悪文の代表格といえる判決文ほど、読んだ時の不快感を体験できるものは他にないかもしれません。法律の専門家である裁判官たちが自分たちにとって慣れ親しんだ用語で作成した文章がいかに難解かを知ることができれば、ライターとしても自分たちの専門分野の記事をわかりやすく書こうと自省を促されるでしょう。読み手のことを意識するきっかけとなる一冊ともいえます。
もちろんその不快感を解消するために、どうすればいいのかについてのアドバイスもこの本にはきちんと掲載されています。末尾には「悪文をさけるための50か条」のリストまで載っているので、ライターとしてスキル向上に努めたい人にはありがたい本といえます。
半世紀以上にもわたって読み継がれてきた良作!
この本が最初に世に出たのは1960年のことです。しかし、その後重版が続けられ、現代でも多くの方に読み継がれてきています。こういった本の類では、他でなかなか見かけないほど古くから愛用されてきました。この本を反面教師として、自身のスキルアップに結び付けてください。「悪文のいろいろ」「構想と段落」「文の切りつなぎ」「文の途中での切り方」「文の筋を通す」「修飾の仕方」「言葉を選ぶ」「敬語の使い方」という8章を読み終えれば、あなたのライティング技術は大きく伸びていることでしょう。
今回紹介した本について
- 書籍名:紹介する書籍名悪文 第3版
- 著作者:岩淵悦太郎
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みんなの感想文
はい・・・10人 / いいえ・・・0人
- 裁判の判例文の特徴を学ぶことで、読者に伝わりやすい文章の書き方について改めて考えることができると分かりました。中でも、悪文にならないように文章を工夫するにあたり、様々な法律の条文が役立つと思いました。
- 一文が1000文字の悪文に興味がでました。ただでさえ長いのに、途中で絶対に飽きてしまいますよね。1960年出版から長年愛されている本ということで、是非読んでみたいです。文章を書く上で役立つことが身に付きそうですね。
- 知らない本だったので、読んでみたいと思いました。特に、悪文を目にした時に他の人がどのように感じるかなど、興味深いことが書いてありそうです。記事作成をする上で、なるべく変な文章を書かないように努力していますが、他の方はどのように読み取るのか気になります。一度、読んでみようと思います。
- 今までは良い本を読むのが、良い文章を書く近道だと思っていました。しかし、この記事のお陰で悪文の大切さも知れたように感じます。確かに、法律などの堅苦しい文章が書いてあるものは特に読みにくいと思っていました。これからも色々な本を読んでいきたいと思います。
- とても面白い記事だと思いながら読みました。まさか、「悪文」というタイトルの本が存在していたとは。それだけでも大きな衝撃を受けました。さらに、自省を促されるという一文に納得です。今後、自分自身の在宅ワークに活用したいです。
- 正直私はライターとして活動していながら、この記事で取り上げられているような内容について考えたことは一度もありませんでした。どれほど不快感を感じるのか気になってしょうがないので、すぐにでも購入してみようと思っています。
- 「悪文」という1960年に出版された本は知りませんでしたが、文章を書く上で参考になりそうな本だと思います。ライティングスキルを向上させる上で重要なのは、悪文の例を読み「どうすれば読みやすい文章になるか」という点だからです。
- 世の中には色々と文章を書く上で参考になる本がありますが、その中でも記事で紹介されている本は、とても参考になりそうです。悪文を反面教師にして文章力アップさせるのもいいと思いました。これからは読み手の気持ちになって、文章を書きたいです。
- これはたいへん参考になりました。悪文を反面教師とするという発想は、非常に参考になります。ただ、これはこの記事というより、ここで紹介されている本の問題なのでしょう。でも、この本に着目したこと、そしてみんなに上手に紹介してくれるという点において、記事を書いた人も評価されるべきだと思います。
- 自分がこれまで書いてきた文章を振り返ってみると、この記事で指摘されるような悪文表現を多用しているように感じ、反省しました。今後は読み手はどのように受け取るのかを第一としてライティング技術の向上を目指したいです。