読む人の「呼吸」に合わせよう!伝える力の鍛え方

読む人の「呼吸」に合わせよう!伝える力の鍛え方

日常生活で人と話をしていて、言葉を自分の意図したものとは違う意味に解釈されてしまったり、言いたいことをうまく伝えられなかったりという経験は、誰にでもあると思います。ましてや、顔を見ることもできず、誰が、いつ、どこで、どんな状況で読むかもわからない記事を執筆しようとする場合、どうすれば、可能な限り多くの読者に、取材した事実や自分の思いなどを伝えることができるかという悩みは、ある意味すべてのライターにとっての永遠の課題といってもよいでしょう。

しかし、難しく考え過ぎる前に覚えておきたいのは、実は「わかりやすく話す」事と「わかりやすく書く」事には共通したポイントがあり、そこの鍛え方がわかれば、伝える力を一気にぐっと向上させることも可能であるという事です。

聞く時も読む時も、人の理解しやすいスピードはほぼ同じ

これはよく知られている話ですが、映画に字幕を付ける場合、1秒4文字で読むという前提で考えて、1度に表示する文字数は、原則として1行10文字で2行まで、すなわち最大で「20文字以内=5秒で読める範囲内」とされています。映画の画面を見ながら、同時に字幕を「読んで」無理なく理解できる量が、おおよそでそれぐらいとされているからです。また、テレビのアナウンサーがニュースの原稿を読むスピードは、1分間に300文字、つまり、1秒あたり5文字が標準とされており、それがニュースを「聞く」のに最適なスピードと考えられています。

つまり、実は直接「話す」場合も、文字として「読んでもらう」場合も、相手に理解してもらえるように伝えられるスピードは、ほぼ同じということになります。このスピードを超えてしまうと、内容そのものはどんなに優れていたとしても、相手に理解してもらえない恐れがあります。ですから、字幕翻訳者もアナウンサーも、まずはこのスピード感を身に付ける練習をすることが仕事のスタートとなるわけです。

文章の上手い人は読む人の「呼吸」に合わせている

成人の1分間の呼吸回数は12~18回、つまり、おおよそ5秒に1回程度であり、映画の字幕の1回の表示文字数が最大で20文字であるのは、人の呼吸のリズムに合わせて、一息で読める量を基準としていることになります。実は、面と向かって人と話をする時も、これと同じです。「話が上手い」といわれている人の多くは、天性の素質により無意識に、あるいは意識的に訓練することで、人の呼吸のリズムに合わせて言葉を話しています。

もちろん、これは文章を書く時も同じです。文章が上手いといわれる人の書いた記事を読んでみると、1文の長さや句読点による文の区切りが、大体1呼吸で読める範囲に収まっており、肺から吸収された酸素が身体のなかを巡るように、伝えたい内容が自然なリズムで頭のなかに入ってきます。その逆に、文章が苦手な人が書いたものを読むと、1文や区切りが長すぎて、途中で読み手の息が続かなくなる部分があるかと思えば、短く切り過ぎて、息が早くなってしまう部分もあり、書かれている内容がスムーズに伝わってこないということがよくあります。

人に伝わるリズムを鍛えよう

文章力を鍛えようと考えた場合、もちろん、表現力を磨いたり、語彙力を増やしたりする努力も大事ですが、それらは、なかなかすぐには目に見える形では成果が出ませんし、ここまでできればよいという終わりもありません。しかし、文章のリズム感を鍛えるということについては、比較的短時間で具体的な効果が出ることが期待できます。

例えば、思い切って映画の字幕と同じように、1文の長さあるいは文の区切りを、必ず20文字前後に揃えるという制約を自分に課して、文章を書く練習をしてみましょう。美文を書こうと意識し過ぎた時にやりがちになる回りくどい表現や、あまりにも熱が入りすぎている場合に多い冗長な文末がなくなり、自然と簡潔に伝えるべきことが伝わる文章になります。もちろん、記事と字幕は別物ですし、あえて、読み手のリズムを崩すことで、伝えたいことを強く印象づけるというテクニックもプロには必要とされます。しかし、スポーツでも、音楽や絵画のような芸術であっても、まず土台となる基本的な技術の習得は不可欠であり、それを身に付けたうえでこそ、独自の工夫やセンスが光ることになります。その点については、文章の世界も同じです。

情熱の炎を燃やしつつも、おだやかに

ライターを志望する人は、みんな「表現がしたい」「人に何かを伝えたい」という強い思いを持っています。しかし、その思いが強すぎて、文章が過剰となり、読む人の呼吸を圧迫してしまい、伝えたいことが伝わらないという結果になってしまっては、意味がありません。情熱の炎を心の中で燃やしながらも、目の前にいる人に向かって、ゆっくりと息をしながら落ち着いて語りかけるつもりで文章を紡いでいくことを心がけましょう。そうすれば、凝った表現などしなくても、あなたの伝えたいことは、確実に読んだ人の胸に響いていくことでしょう。

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