ライターが勇気をもって意見を伝えるための入門書

ライターが勇気をもって意見を伝えるための入門書

ライターが直面するジレンマ、それは読者の全てが自分の文章を肯定してくれるわけではないことです。ときには強烈な反対意見をぶつけられるなど、傷つくこともあるでしょう。そんなときにおすすめしたいのが『はじめての批評 ──勇気を出して主張するための文章術』です。自分の意見を正しく伝えるための方法、そして世界に自分の意見を伝えるために必要な勇気について本書は頼もしく解説してくれているので、ライター初心者は励まされることでしょう。

読者に届く意見のぶつけ方

本書は批評という概念を通して、ライターが自分の意見を表明するときの姿勢について解説してくれています。しかし、一方でよく、ライターに必要な能力は自分の意見を伝えることではないという意見も耳にします。ライターは取材対象や作品を紹介する立場であって、そこに主観表現を付け加えて捻じ曲げてしまうことは良しとされないからです。ライターとして成功するにはまず、客観的描写が丁寧にできることが大前提です。

ところが、客観しかない文章だと今度は、機械が書いたような面白味のない文章になってしまい、読者が離れていきます。大きな需要のあるライターになるためには独特の味わいが文章からにじみ出ていないといけません。ひとりよがりにならず、それでいて読者にも伝わる文章を書くためにライターは批評を学ぶことが大切です。批評とは「価値を伝えること」と著者は定義します。ライターの自己主張のために書かれた文章ではなく、対象の価値をさまざまな視点から伝えるために書かれた文章であれば、読者の心を打つことができます。批評は対象の知られざる姿を明らかにし、読者に届けるための手段なのです。

どうして批評が求められるのか

もちろん、批評には「褒める批評」もあれば「貶す批評」もあります。では、貶す批評が必ずしも読者の反感を買うのかというと、そういうわけではありません。悪いものをはっきりとさせることは、別のいいものの価値を浮かび上がらせるからだと本書は説きます。ライターに愛があるのなら、批判を行っても読者に受け入れられる可能性はあるのです。この点はライターの姿勢の問題として覚えておきたいところです。どうして雑誌や活字文化が効力を失っている時代に批評の重要性を著者が解説するのかというと、現代では深く考えることが失われつつあるからです。

SNSでは短い文章や動画で気持ちを表すことが増えました。物の価値が正確に伝えられることは少なくなり、表面的なコピーが増えています。そんな時代だからこそ、対象の価値をしっかりと伝えられるライターの存在感は強くなっています。ありきたりな言葉ではなく、本当に深い文章を読者に届けられるライターは注目され、人気を集めることができるでしょう。そのためには鋭い洞察力と文章力を身につけることが肝心です。本書はライターが持つべきプライドについての指南書でもあるのです。

勇気を出して意見を書こう

どんなに優れた文章でも全ての読者を満足させることは難しいでしょう。当然、厳しい反論が寄せられることもあります。しかし、それもまた、読者に深く物事を考えるきっかけを与えたとなれば、あなたの文章には意味があったのです。ライターとして生活をしていこうと決意したのであれば、ときには反感を買うことも覚悟しましょう。それでも、勇気を出して文章を書き続けることが大切です。感情に任せて書き綴った言葉ではなく、冷静に物事の価値を伝えようとした愛のある言葉であれば、反感だけでなく賛同も得られるはずです。本書は技術と同時にライターが気持ちを強く持って仕事を続けていくための心構えを導いてくれます。自分の姿勢に迷っているライター初心者にこそ、本書の言葉は響くでしょう。

今回紹介した本について

  1. 書籍名:はじめての批評 ──勇気を出して主張するための文章術
  2. 著作者:川崎昌平

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みんなの感想文

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  • 短い文章の中で、ライターとして仕事を続けていく上で、決して忘れてはならない「根幹」を教えてくれていると思います。ライターとして自分の文章に責任と自信をもって、言葉を発信し続ける事の意味を教えられました。
  • 反感であれ、賛同であれ、確かに読者が興味を持った結果ということがわかりました。同時に、表面的で機械的な文章ではない、本当に深みのある文章というものに、どうすれば近づくことができるのか、考えさせられました。
  • ライターにとって、読み手を意識して書くのは当然の事です。もちろん、必ずしも肯定的な感想を持ってくれる読者ばかりではありません。プロとして、10人いれば10通りの考え方があるのを想定して書くのは、当然の事だと学びました。ただ、最優先するべきことは、読者に有益な時間と情報を提供しようという努力です。
  • 自分が書いたものに批判はつきものと、頭では分かっていても、なかなか心がそう受け止められない事も多いので、批判の受け止め方の良い勉強になりました。また、紹介されている本も一度読んでみたいと思いました。批判もしっかり受け止めた上で、自分の文章を大事にして書いていきたいと感じました。
  • ライティングでは無難な文章を心がけていました。この記事を読んで自分の意見を勇気を出して伝えていこうという気持ちが芽生えました。紹介されていた本についてもぜひアマゾンで購入してこれからの参考にしたいと思います。
  • 批判という言葉を悪い意味でとらえていました。しかし、この記事を読んでかなり批判というものに対する印象が変わりました。物事の価値を正しく伝えるためにも批判的に書くということは必要なのだと実感しています。
  • 確かにここに記載されている文章はなるほどと思わせるものでした。文章を作成していく上では大切だなと感じました。ただ、本の購入を誘導するような内容になってしまっていたのが、少し残念な感じがしました。ビジネスだから仕方ないのでしょう。
  • 現代のSNS等で短い文章や動画がよく利用されるようになっている時代だからこそ、洞察力をもって端的に相手に伝わる文章が必要だという部分に考えさせられました。また、実際の本が出され、その後起承転結で相手を説得させる文章になっていて読みやすかったです。
  • まだサグーワークスを始めていないときに、「貶す批評」に値する文章を読んだことがあり、私自身はその文章に反論しました。それが物事を深く考えるきっかけになっていたことにこの記事を通してわかり、自分が知らずにやっていたことを気づかせてくれる記事でした。なんだか得したような気分になりました。
  • ライター業で批評文を書くのは、とても難しいものですが、コツをしっかりと把握すれば私でもできそうだなと感じました。客観的な描写が読み手側にも心に刺さるとのことで主観的な表現を使いがちな私は今後改善していきたいなと思います。
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