Webライターを13年やって気付かされた書き方のコツ
更新日時:2018/12/26
かつて紙媒体のライターだった私が、Webライターになってから13年ほど経ちました。これまで大小さまざまなWeb制作会社や広告代理店からお仕事をいただき、1万件を超える記事を書いてきました。
そんな私には、これまでの経験の中で身に付いたことや気付かされたことがたくさんあります。ライターを始めてすぐに気付かされたことから、10年以上続けてやっと気付いたことまでいろいろです。
そこで、まだWebライターの仕事を始めたばかりの人や、これから記事を書いてみたいと思っている人に、私が経験上感じた書き方のコツをお話しします。
Webライターは自分本位ではダメ
私がWebライターの仕事を始めてすぐに痛感したことは、自分本位の書き方では記事にならないということでした。紙媒体でも文章を書いてきた私ですが、「他人が読むための文章を書いている」ということを意識させられたのはWebライターになってからです。
紙媒体で書いていたのがエッセイや自分が考えた創作のストーリーだったからかもしれません。
最初に気付かされたのは、ライターの文章は自発的に書く自身のブログの文章とは違うということです。
私はWebライターとして文章を書き始める前に、毎日個人的なブログでかなりの長文を書いていました。8年間書き続けたブログなので、記事の作成と同時進行していた時期があります。
そのような中で、Webライターとしてブログ記事を書く依頼を受けました。あるクリニックのスタッフ目線で書くことが条件です。病気を早い段階で見つけることの重要性や、健康診断を受けることの大切さなどを伝える文章を求められました。
私自身、病院やクリニックで働いていた時期があったので、内心楽な仕事だと思って引き受けたのですが、普段書いている書き方ではダメだったのです。
ブログに載せる文章でも、依頼を受けて書く文章は、発信者としての目線よりも読み手の目線を重視して書く必要があります。自分が自発的に書く文章は、自分がおもしろいと感じることを書きたいように書けばそれで済みますが、依頼を受けて書く文章はそういうわけにはいかないのです。
与えられたテーマの中で読み手が最も知りたいことは何かを考え、最後まで興味を持って読んでもらえるような工夫をしなければなりません。
文法的に正しい文章を書くことや、依頼の条件に合わせて文章を書くということは、ライターとしてわずかでもお金をもらうのであれば当然のことですから、ここであえて細かく言う必要はないでしょう。ライターとして個々の文章に差が出るのはその先です。
読み手がおもしろいと感じる切り口で文章を書かなければ、わざわざライターが依頼を受けて文章を書く必要が無くなってしまいます。
観客よりも先に笑ってしまうお笑い芸人があまりおもしろくないのと同じで、自分だけがおもしろいと感じる文章を書いてしまっては、ライターとしては失格なのです。
依頼内容と読み手を意識する
Webライターとして仕事をしていると、同じテーマの仕事がいろいろなところから同時に来ることがあります。
例えば、冬であれば「肌荒れ対策」「冷え性対策」。この2つに関するお役立ち記事は女性ライターの元によく依頼が来るので、毎年のように大量に書くことになります。
そのとき、あなただったら「前に書いた記事のてにをはを変えて、適当に書いておけば楽だ」と思いますか?それとも「困ったな、この間書いたのと同じテーマだ。どうしよう」と思いますか?
ライターの仕事を始めたばかりの私は後者でした。前に書いた記事を土台にして、新しい情報を少しプラスすれば書けるからです。しかし、それでは巷の記事の中に埋もれてしまうということに気付かされました。Webライターは、自分の記事を書く際、情報源を求めて何度も検索を繰り返します。
そんなとき、検索に引っかかってこないような、周りの記事に埋もれてしまう文章を書いたのでは意味がないと実感しました。そのおかげで、先に挙げたどちらの考え方でもなくなったのです。
私は依頼内容を見たとき、「依頼主は何を伝えたいんだろう?読み手はどの層なのかな?」というところがまず気になります。というのも、依頼主が化粧品会社か皮膚科クリニックか健康食品会社かというだけで、記事の切り口を変える必要があるからです。
特に、読み手の見極めは大事なポイントになります。読者が10代の学生さんか、20代のOLさんか、それとも30~40代の主婦層かによって、読みたいと感じる内容がまったく違うからです。
同じ冬対策でも、すっぴん生足の女子学生なら、手やひざなどのかさつき対策や制服の下に何を履いて冷えを防止すればよいかを知りたいかもしれません。
20代OLならオフィスの冷え対策に使えるグッズや、乾燥小じわを目立たせない化粧下地の情報を知りたいと思う可能性があります。子育て中の主婦層なら、水仕事に負けない手荒れ防止法や子供の肌荒れ対策が気になる人もいるでしょう。
年齢層や属性によって選べる対策方法やお金のかけ方が違ってきます。読み手の見極めが大事なのは記事の方向性を決めるためだけではありません。どんな言葉を使うかにも影響します。ターゲットが決まれば言葉もその層が理解しやすいものを選べるからです。
「ライティングテクニック」というと、文章を実際に書く段階の技術だと思うかもしれません。しかし、他人が読んで理解できる程度の文章を書ける人は、ライターでなくても世の中にたくさんいます。
本当に必要なライティングテクニックは準備段階にあるのです。
書く前にどのような準備と段取りができるかが、素人とプロの差になるということを実感しています。
具体的な内容で伝える
「具体的に書いた方がわかりやすい」というと、なぜ今更こんな当たり前のことをいうのかと思うかもしれません。しかし、ライターとして文章をたくさん書いていると、案外忘れてしまいがちなことなのです。
パッと見た目は名文に見えるのに、読んでもなかなか理解できない文章に出会ったことはありませんか。
かっこいい言葉がたくさん使われていて、文法的には間違っていないのに、何が書かれているのかが頭に浮かばない迷文。ライターはたくさんの言葉を知っている分、ときには抽象的な文章を書いてしまうこともあります。
決められたテーマについて100文字で表現するのと1000文字で表現するのとでは、どちらがライターの個性を出しやすいでしょうか。当然1000文字の方ですよね。
実は、ベテランライターが任せられる文字数の多い文章よりも、初心者ライターが挑戦する文字数の少ない文章の方が難しいケースがあるのです。
特に短い文章でライターの個性を出すのはかなり難しいことだといえます。主語、述語に最低限の肉付けをしたらそれで完成という形になってしまうため、誰が書いても同じような文章になりやすいからです。そのため、コピペを疑われたり、承認してもらえなかったりする原因になることもあります。
しかし、いくら文字数の少ない文章であっても、具体的な内容が盛り込まれている文章は読み手の興味を引きます。
例文で比較してみましょう。
昨日から急に寒くなってきました
関東地方では昨晩初めて10度を下回りました
どちらの例文も文章としては問題はありません。しかし、赤枠の文章の方がどのように「急に寒くなった」のか、具体的にわかるようになりました。
1つの言葉にごてごてと修飾語をくっつけるのではなく、具体性を示す言葉を文章の中に1つ盛り込む方が、読み手にもイメージしやすくわかりやすい文章になるのです。
ライターは他人が読む文章を書くのですから、わかりやすい文章を書けるかどうかという点はとても大事です。
信ぴょう性のある文章を書く
長年Webライターを続けてきて、仕事をするたびに実感するのが、信ぴょう性のある文章を書くことの大切さです。Web上にはたくさんの情報が溢れていますが、間違った情報もたくさんあるからです。
過去には正しかった情報でも、時代の変化や法律、税制などの改正のために、結果として間違った情報になってしまっていることも多々あります。そんな間違った情報が、検索結果のトップページに並んでいることがあるということをライターをしていると思い知らされます。
私が依頼される仕事は、説明文やコラムの執筆が多いので、選ぶ情報が間違っているととんでもないことになります。「何年か先に読んでも問題がない文章にしてほしい」という依頼が多いのも、情報の信ぴょう性が重視されているからでしょう。
記事を書く際に、検索結果のトップに出てきたサイトだけをサッと流すように読んで執筆してしまうと、本来書かなければならない内容を落としてしまうことがあります。なぜなら、トップページに出てきたサイトの内容をそのままコピーするようにして書かれた、複数のコピーサイトで埋め尽くされていることがあるからです。
偽情報をもとに作られた偽情報のコピーに踊らされて書くと、信ぴょう性のない記事を自分も作ってしまうことになります。
長くWebライターをやっているので、検索結果に挙がってきた記事のほとんどが自分の書いたものだったということもありました。自分が書いた文章を情報として扱ってよいのかと正直悩むこともあります。信ぴょう性のある文章を書くためには、日々勉強が必要だということを実感させられる毎日です。
間違った情報をもとにして記事を書くことを防ぐためには、日常的に周りの出来事に対するアンテナを貼っておくことが必要だと思います。
たとえば、法律や税制の改正、社会情勢の変化、新商品の動向などはチェックして、新鮮な情報を頭の中に入れておくことも大事なことです。
実際に文章を書く際の技術だけでなく、正しい情報を取捨選択できるようにすることもライターが身に付けておきたいコツだと私は思います。
記事の設計図をしっかり作る
私は仕事を依頼されると、先にタイトルと見出しを決めて、各段落に何文字ずつ割り振るかを決めてしまいます。大見出し、中見出し、小見出しを配置して、それぞれにどんな内容を書くかという設計図を先に作ってしまうのです。
それを繰り返していると、文字数やテーマなどを見れば、何段落で何文字ずつ割り振ればよいかがすぐに頭に浮かぶようになります。たとえば、2000文字の文章を書く際に、導入文とまとめが必要なら、導入文とまとめがそれぞれ200文字ずつで、残りの1600文字を3~4段落に分けるのが書きやすいという具合です。
記事ごとに全体的な組み立てを行い、各段落に盛り込むことを書き出してから作業を始めると、内容の重複や漏れを防ぐことができます。もし、この作業をしないでいきなり先頭から書いていくと、書くべき内容ではなく、書きたい内容や書きやすい内容で進んでしまう可能性があります。
ライターは依頼を受けて文章を書くので、必ず文章の中に盛り込まなければならないことがあるはずです。それに、先頭から順番に作業を進めていくと、段落ごとのボリュームもいびつになりやすいという欠点があります。
たとえば情報が多いところは1000文字書いたのに、書きにくいところは200文字の段落になってしまうというような感じです。
そうならないためにも、最初に全体の文章をどう書いていくか、設計図を書いてから始めることが必要なのです。
記事の”つかみ”はライターの手腕
最後に、Webライターとして磨いておきたい技術について話をします。Web上にはさまざまな文章が溢れているので、目立つタイトルを付けたいと思う人は多いでしょう。
読み手の好奇心をくすぐるようなタイトルを付けたいと思うのは私も同様ですが、単純に読み手の目を引くだけではかえってマイナスになってしまうこともあります。
たとえば、「これ」「あれ」というような伏せ字を使って誘導したり、過激な言葉を使ってクリックさせようとしたりするケースです。
あまり過大な期待を持たせてしまうと、読み始めたときに記事の内容がタイトルと合ってなくて、がっかり感が大きくなってしまうこともあります。他の記事に紛れてしまうようなタイトルではダメですが、どんなことが書いてあるかがわかりやすい方がタイトルとしてはよいでしょう。
記事までたどり着いてもらえた場合、内容をしっかり読んでもらえるかどうかは導入文にかかっています。どのような人がターゲットになっているのかを考えて、これからどんなことを書くのかを伝えるような導入文を書けるように練習をしましょう。
段落内容の配置も最後まで読んでもらうためには重要なポイントです。起承転結という流れを意識して段落を並べていけば、最後まで読んでもらえるはずです。
この他にも、長年ライターをやっているといろいろと気付くことはありますが、それらはたくさんの文章を書いていく中で、自然に感じ取っていった方がよいことかもしれません。
まずは小手先のテクニックは考えず、「読み手が読みたいと感じる文章を書く」という意識を持つことから始めてみてはいかがでしょうか。
この記事をシェアする
みんなの感想文
はい・・・10人 / いいえ・・・0人
- 10年もライター経験を積んでいる方の書いた記事だけあって、とても読みやすく気づかされる点が多い、とても参考になる記事でした。特に、依頼主の求めと、読み手を意識して記事を書くと言う点は、頭の片隅にはあっても中々実現できないので、具体的な攻略方法が書いてあり、勉強になりました。
- さすがに10年のライター歴の人の記事は参考になりました。読み手の気持ちを意識して具体的な内容を記載することが大切であることがよく分かりました。自分もこれから記事を書く際には、このことを肝に銘じて書いてみたいと思います。
- これこそ書き方のコツ、目からウロコでした。とくに、ライティングとして書く文章は他人が読むものだという言葉に教えられました。そこに読み手のことを考えるという必然が生まれ、さらには依頼主の求めているものを理解する重要性を再認識できました。具体的にと言う部分では、まさに具体的に書いてあるので参考になります。
- ライターの文章とブログの文章は違うという点でなるほど!と思いました。確かに同じテーマがあると書き方に困っていましたが、依頼者や記事を読むであろう層を意識すれば書き方や切り口が変わってきますね。もう一度その視点で考えてみようと思います。
- 確かに自己満足の文章ではだめですね。気づかないうちに主観的で分かりにくい文章になっていることがあります。読み手の人物像をしっかりと意識し文章を書くことを心がけようと感じました。簡単なようで難しい、大事なことですね!
- 自分の文章に酔ってしまい、ついつい読み手の視点をおろそかにしてしまったなということに気づきました。また、具体的なデータは説得力があがるという指摘は、確かにそのとおりだと思います。具体例をパッと出せるよう、普段から情報を仕入れていこうと思いました。
- この記事ではライターを10年間やって習得した、書き方の極意を知ることができました。具体的には自分だけが前のめりになり、面白いと思う文章を書いてしまっては、ライターとしては失格という点です。読み手が興味を引く文章を書くことが、重要だと理解できました。
- ベテランのライターの人の文章を見られて、非常に参考になりました。これを読んで読み手がどういった情報を必要としているのかを考えながら書く、ということが重要なのだとわかりました。また具体的な情報を入れればよりわかりやすい文章になると分かったので、これから実践していきたいです。
- 他人が読むということを前提として文章を書くという基本的なことを、改めて考えさせてくれる記事でした。また、確かに誰でも書けそうな内容になってしまうことも多いので気を付けようと思います。身が引き締まります。
- 確かにブログの文章って自己満足になりがちですよね。ライティングの投稿では読み手を想像して、どんなことを細かく知りたいか、きちんと意識して文章を作りたいと思いました。具体的なことを一つ入れるだけで読み手が入り込みやすくなりますもんね。