ライターを名乗るなら一度は読んでおきたい『調べる技術・書く技術』

調べる技術・書く技術

ライターとは、与えられたテーマに対してただひたすら文章を書くだけの仕事ではありません。本来はクライアントとの調整にはじまり、テーマの設定、取材による聞き取りや資料による情報収集を行った上で、それを文章にまとめ上げるという一連の作業をともなうものです。

特にノンフィクションライターの場合、事実を歪ませることなく、しかし読者に訴えるような記事をつくるためには、つねに一次資料を意識した情報収集が欠かせません。ノンフィクションライターとしての仕事術を余すところなく伝えている『調べる技術・書く技術』は、Webライターにとっても見習うべきポイントが目白押しです。

一流の技術論から調査方法を見直す

この本は全八章で構成されており、前半はテーマの決定、資料収集、取材方法、原稿執筆に関する技術論で占められています。特に、情報収集においてはWebライティングにおいても一読の価値があるといえるでしょう。本書では情報源となる図書館や新聞、雑誌の取扱い方法にはじまり、取材における一連のマナーや、取材中における相手との雰囲気作り、本音の引き出し方にいたるまで、一つの記事を作り上げるための情報収集に関するあらゆる技術が詰め込まれています。

もちろん、新聞や雑誌の読み込みや取材は時間がかかるので、Webライティングでそんなことをしていては仕事にならないといわれるかもしれません。しかし本来、ライターは読者を動かすために、つねに新しい情報がないかどうかを貪欲に探す必要があります。そして、得た情報に誤りが無いかどうかを検証する姿勢を持ち続けなければなりません。記事に対する責任はWebライティングにおいても一緒。不特定多数の目に触れるインターネット上の記事であるからこそ、Webライターも同じ姿勢を持ち続けることが必要なのだと気づかされます。

技術に裏付けられた記事は人を動かす

本書の後半では、作者が書いた記事を実例として用いながら、どのような情報収集を行ったのかについて解説しています。実例の記事はどれも抜粋ですが、いずれもそのリアリティに引き込まれることでしょう。取材を通じて得た情報や人間同士の繋がりを、しかし一定の抑揚でもって書き起こしていく文章には、新聞や雑誌だけでは見えてこない現実を読者に訴えかけます。

そうした文章の力強さは著者の文章力のなせる技でもあるですが、一方で記事全体からは、事件に対してまだ浮かび上がっていない事実があるのではないかという疑いの眼差しが、問題提起として読者に突き刺さります。そうした問題提起は、取材技術にもとづく徹底的な取材の様子に表れているのがわかります。

書くべきテーマは無数にある

インターネット上の記事からテーマに関する情報を集めてWebライティングを進めていると、コピペをしているわけではないのにどこか見たことのあるような記事になった、という経験は誰にでもあるのではないでしょうか。そんなとき、ありとあらゆるテーマはすでに書き尽くされているのではないか、という気持ちになりがちです。

本書では、テーマは書き尽くされてはおらず、同じテーマでも見方を変えることによってオリジナリティを生み出すことがある、と主張しています。取り上げているテーマはどれも重い内容を含むものの、別の視点からテーマに切り込んだ結果、新たな事実を世間に広めたという例を紹介しています。Webライティングの場合、テーマや記事の方向性を提案する案件も多くありますが、もし他と同じような記事を書きたくないのであれば、本書の実例から得られるテーマの考え方はとても参考になるはずです。

ライターなら読んだあとも手元に置いておきたい一冊

本書はWebライティングに特化したノウハウを紹介する本ではないので、執筆時に気軽に参照するようなものではありません。しかし、情報収集やテーマに対するどこまでも真摯で貪欲な姿勢、そして書くことの責任についてライターに訴えかけてくる、そんな本です。Webライターもライター業のひとつである以上、記事に対する姿勢や責任は同じです。一人で活動することが多いWebライターであるからこそ、ふとした時にこの本を開くことで、ライター業への矜持を見直すことができます。

なお、ライターとしてノンフィクション分野を敬遠していた人には是非おすすめできる一冊です。本書で実例として取り上げる記事の抜粋は、いずれもリアリティを伴って読者に訴えかける力を持っています。生半可な心構えでは通用しない世界ですが、出来上がった記事の力強さを一度目にしてしまうと、ノンフィクションへの興味が煽られるに違いありません。

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