相対的価値と絶対的価値の関係性『幸せとお金の経済学』

相対的価値と絶対的価値の関係性『幸せとお金の経済学』

働くことを通じてやりがいや生きがいを見つけられるのは素晴らしいものです。その一方で、「仕事から得られるお金をどう生かしていくのか」といった部分を深く考えるのも大切だといえます。

ロバート・H・フランク著『幸せとお金の経済学』(フォレスト出版)では、人々が無意識のうちに参加してしまっている「不毛な競争的消費」について言及しているのが特徴です。

周りと自分を比べるのではなく、自分なりの幸せを見つけていくことの重要性を説く本書について解説します。

地位財と非地位財から考える幸せのあり方

本書では人々が得られる広い意味の財産として、「地位財」と「非地位財」について取り上げています。地位財とは、他人と比べたときに自分のほうが勝っている状態ができることによって生まれる価値のことです。

具体的には、収入や社会的地位、家や車といったものを指します。そして、非地位財とは他人が何を持っているかということは気にせずに、そのもの自体に価値があり満足できるもののことです。愛情・健康・自由・休暇・社会への帰属意識などを指しています。

地位財は相対的な価値観であるため、全員が全員に対して比較的優位になるというものではありません。そのため、長期的に幸せが持続していく非地位財を獲得するのが大切だと著者は説いています。

むやみに地位財ばかりを追い求めてしまうのではなく、自分の幸福度を高める非地位財のためにお金を配分していく部分がポイントだと取り上げているのです。仕事を通じて得られる社会的地位や収入は地位財であるものの、その点ばかりに意識が向いてしまっては幸福感は薄れてしまうでしょう。

大事な点は得られた地位財をどのような非地位財のために使うかがカギだということです。「お金は稼ぐことより使うほうが難しい」といった点をあらためて考えさせてくれる内容になっています。

平均を追い求めすぎてしまうと不毛な競争に巻き込まれる

目標を持って頑張ることは大切であるものの、周りと自分を比べ続けていると「不毛な競争的消費」に振り回されてしまうと本書では説いています。

たとえば、努力して高価な腕時計を買ったとしても、そこから得られる満足感が長く続かないのは、自分よりもさらに高価な腕時計をしている人がいるからです。周りと同等かそれ以上の地位を得ようとすれば、仕事や健康、お金の使い方といった面で無理が出てくるものでしょう。他人との差を少しでも埋めるために睡眠時間を削って働いたり、カードローンを組んで無理に高価な物を買ったりするのは幸せから遠のいてしまう要因にもなってしまいます。

「これは本当に欲しい物なのか?」といった問いを持ち続けることで、不毛な競争的消費から少しずつ抜け出すことができるでしょう。幸せの形は人それぞれではあるものの、相対的な価値観(地位財)と絶対的な価値観(非地位財)を混同してしまってはいけないと本書では繰り返し説かれています。

忙しい日々の暮らしのなかで、ふと立ち止まって仕事や消費について考えるのも重要です。冷静に世の中との向き合い方を考えれば、たとえ収入が平均以下であっても満ち足りた生活を送ることができるでしょう。

自分なりの判断基準を持つことが大切

世の中の流れは絶えず変化をしているため、世の中のほうに価値基準を合わせてしまうと常に忙しいと感じてしまうものです。時代や環境が変化しても、「自分のなかで変わらないものは何か?」といった判断基準を見定めるときに本書は役立ちます。

どんなに価値のある物であっても、物である以上はいつかは壊れて使えなくなってしまうといえるでしょう。その一方で、愛情や自由、健康といったものは自分のあり方次第で感じ方も違ってくるものです。地位財と非地位財のバランスを自分なりに決めていくことが幸せを見つけるきっかけになるでしょう。

自分のなかで幸せになるポイントがつかめていれば、仕事や趣味、人付き合いといった面での捉え方も変わっていくはずです。「頑張っているけど、幸せが実感できない」と感じたときにおすすめの一冊だといえます。

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