作品の魅力が伝わる書評を書くために心がけるべきポイントとは?

「書評」と呼ばれる文章の中には、広い意味では様々なものが含まれます。独自の視点で作品を分析・評価し、場合によっては批判的な内容を展開する場合がある「評論」といわれるようなものから、個人の主観的な感想を述べるだけの「感想文」というべきものまで、異なる内容と質のものを「書評」と呼んでいることがあります。
ただ、Webライターが手掛けるものに限定していえば、多くの場合「書評」を読んだ人にその本を購入してもらうことを目的とするものがほとんどです。そこで、ここではそのような書評に絞って話を進めます。
このように、書評の目的を本の購買促進だということを前提にすると、書評に求められているものが何なのかがはっきりします。それは一言でいえば、その本を買いたくなるような魅力を読者に伝える、ということです。
今回は、作品の魅力を伝えられる書評を書く方法について説明していきます。
標準的な書評の構成とは
書評を構成する大まかな要素には、以下の4つがあります。
- 作品の内容の要約
- 作品が書かれた背景や著者の紹介
- 作品の魅力の紹介
- 結論としての作品購入の推薦
という4つのものがあります。
書く順序も概ねこの順序に従えば問題ありません。各要素の詳細は後に述べます。
先に述べた通り書評の目的は作品の魅力を読者に伝えることですから、これらのうち最も比重を大きくすべきなのは「作品の魅力の紹介」です。具体的なボリュームの比率に決まりはありませんが、1:1:3:1程度のボリュームを意識しておけば間違いないでしょう。
書評に限らず、最も伝えたい部分に多くのボリュームを当てることは文章作成の基本です。
では次に、これらの各項目について細かく見ていきましょう。
作品の内容の要約は魅力を書くために必要な範囲にとどめる
まず、「作品の内容の要約」についてです。ここでは、小説などの物語であれば「あらすじ」を、その他の種類の作品であれば「内容の概要」を書きます。
ただ、書評を本の購入のきっかけにしようと考えている人の多くは、書評から作品のあらすじや内容の概要を詳しく知りたいわけではありません。また、小説などでいわゆる「ネタバレ」をしてしまっては、かえって本の購入にはマイナスに作用してしまう可能性があるだけでなく、その作品を読んでいない人に対してマナー違反となってしまいます。
ここで意識すべきことは「作品の内容の要約」を書く目的です。それは、作品の魅力を伝えるための前提として必要だから書くということです。そのように考えると、「作品の内容の要約」はあくまでも後に書く「作品の魅力の紹介」の前提として必要な最低限の内容に抑えるべきだといえます。
「作品の内容の要約」に多くのボリュームを当てている書評がしばしば見受けられます。これは「あらすじ」や「内容の概要」をくまなく伝えなければならないという誤解から来ているのかもしれません。
しかし、それは読者が実際に本を読んで把握すれば良いことであって、書評の役割ではありません。繰り返しますが、伝えるべきは魅力であって内容ではないのです。これをしっかり意識すれば、どうしても「作品の内容の要約」が長くなってしまうという方の書評も変わっていくはずです。
作品の背景や著者紹介は省いても良い
次の要素である「作品が書かれた背景や著者の紹介」とは、その作品が書かれるきっかけとなった社会的な背景や事件、あるいは著者の過去の作品との繋がり、また作品に表れている著者自身の人となりのようなものです。これらを書くと書評としての内容に厚みが出てきます。
ただ、この要素は必須とまではいえません。作品の魅力はやはり作品そのものから得られるものであり、背景や著者について知らなくても読者が感じることができる魅力を伝えるのが書評の第一の目的だからです。
そのため、この要素は書評を構成する際に省いても構いません。また、次の「作品の魅力の紹介」の中に含ませる形で触れても良いでしょう。しかし、作品の魅力を伝えるためには、これらに是非とも触れるべきだと考えられるのであれば、むしろ独立した構成要素として加えるべきです。
ここでも、作品の魅力を伝えて購買に繋げる、という書評の目的に立ち返った判断が必要になります。
共感を意識して作品の魅力を紹介する
さて、書評のメインの要素として最重要でボリュームも大きくすべき「作品の魅力の紹介」は、どのように書いていけば良いのでしょうか。
多くの作品には複数の魅力があることが通常です。例えば小説の魅力としては、テーマの選び方の独自性から、ストーリーから読者に伝わる作者の考えや思想そのもの、ストーリー展開の面白さ、文体の特徴やリズムなど、様々な角度から魅力を挙げることができます。
また、科学エッセイのようなものであれば、扱われている知識そのものの興味深さや新しさ、また分析手法のオリジナリティもあれば、著者が読者に説明するスタイルに魅力がある場合もあります。
このように複数ある魅力をわかりやすく書評を読む人に伝えるためには、まず魅力を書きだして整理してみることが必要です。そのうえで、メインとして伝えるべきポイントはどこなのかをしっかりと決めましょう。この作業のプロセスで、書くべき魅力を選択し、ボリュームの比重も決定します。場合によっては、大きな魅力一つに絞って書くことも選択肢のひとつとなるでしょう。
そして、「作品の魅力の紹介」を書く際に最も気をつけるべきことは、書評を読む人の「共感」を意識して表現することです。作品から読み取ることや感じ方は、多かれ少なかれ人それぞれであり、書評においてもある程度主観的になることは避けられません。
また、良い書評を書こうという意気込みのせいで、他ではあまり見られない独自の視点で作品の魅力を紹介しようとする人もいるでしょう。しかし、Webライターが求められている書評は、言うなれば本の販売促進に役立つものです。
だとすれば、いくら優れた視点で書かれていても、ほんの一部の人しか共感しないような書評を書いても意味はないのです。多数の人が本を買ってみようと思えるような共感できる魅力を伝えることこそ、書評に求められているのだということを忘れないようにしましょう。
この意味では、ある程度の主観表現が許される書評であっても、Webライターは自分独自の考えを抑え、世の中の多数の人たちが何を感じるのかを想定しながら書評を書くことが求められているといえるでしょう。
その本を買うとどのような効用があるのかを書く
最後に「結論としての作品購入の推薦」です。「ここまで書いてきた魅力があるので買ってくださいね」と書けば良いようにも思えますが、それだけでは不十分な場合もあります。
本を買う人の多くは、その本そのものが欲しくて本を購入するわけではありません。その本を買うことによって、新しい物の見方を得たり、自分の中にある感情を確かめたり、あるいは気づかなかった感情を見つけたりすることを求めています。
あるいは、楽しいエンターテインメントを求めている場合や、新しい知見を得ることを求めている場合もあります。つまり、本を買うことで自分自身の生き方や生活に変化、喜び、成長などが得られることを期待するからこそ、お金を出して本を買おうと思うわけです。
だとすれば、このような効用があるのを伝えることこそが、作品購入推薦の最も重要なポイントであることがわかります。
そして、それを表現するには、その作品を購入するのはどのようなタイプの人が多いのかを想定して推薦することが大切です。年齢や性別、社会的立場などはもちろんのこと、どのような悩みを抱え、どのような将来を望んでいるタイプの人なのかなど、できるだけ具体的にイメージしながら書きましょう。
書評の目的を常に意識できる手順が有効
ここまで見てきたように、Webライターが書くことを求められている書評の目的は、あくまでも本を買ってもらうことです。そしてその目的を達成するためには、書評のどの要素を書く場合も、それが作品の魅力を伝えるために必要な記述となっているのかを意識することが非常に重要です。
これを具体的に実践する方法としては、次の順序で作業をすると良いでしょう。まず作品の魅力を書きだして整理し、主な読者層として想定すべき人々をイメージしたうえで、どの魅力をメインに訴えるかを決めます。
次に、この魅力を伝えるために最低限必要となる作品の概要はどこまでかを考えます。また、作品の背景や著者の紹介が魅力を伝えることにプラスになるかどうかの判断も同時にします。
そして、魅力の紹介をメインとした各要素のボリュームのバランスを決めて骨子を組み立てます。あとは、その骨子に従って文章を書いていきます。
このような手順を踏みながら何度かチャレンジしていけば、自然と作品の魅力を伝えられるバランスの良い書評を書けるようになるでしょう。
こぶたのまとめ
- 作品の要約は必要最低限の内容に抑える
- 独自性より共感を意識して作品の魅力を伝える
- 作品を読むことで得られる効用を伝える
書評の目的は本の購買促進だということを意識しましょう。