私の一冊「寺田寅彦随筆集」

ライター名:かぼじん
プラチナライター歴:2年3ヵ月

皆さん、寺田寅彦という人物について知っていますか?大方の人は「誰?」という反応ではないかと思います。一応、ウィキペディア的に説明しますと、寺田寅彦は明治生まれの日本の物理学者です。専門分野は地球物理学ですが、科学者としてはかなり早い時期から結晶解析、統計力学的な物理学アプローチを試みた学者としても知られ、のちの名だたる日本の科学者たちにもその思想は大きく影響しています。

ただ寺田寅彦はなんといっても、科学者でありながら、文筆家、俳人としても素晴らしい仕事を残した人物として有名で、なんとあの夏目漱石門下の一人なのです。漱石の『吾輩は猫である』の寒月先生、『三四郎』の野々宮宗八のモデルといわれていて、作中の人物の通り、ひょうひょうとした博識の人物だったようです。その人柄は彼が残した随筆集などからも伝わってきます。私はこの寺田寅彦の随筆集の文体、雰囲気がとても好きなのです。

どういう特徴があるかというと、その世界観は例えて言うと「長屋から眺めた宇宙」といった感じでしょうか。身近にある虫、花、空気の湿り気といった事象を見つめながら、そうした小さな自然とつながっている大宇宙の法則について、洒脱に、縦横無尽に語りかけてきます。時には体調の悪い自分の体の様子と、部屋の中で一定の不気味なリズムを刻む蒸気ストーブのリズムとの相似性に思いをはせたり、自画像を描きながら、幼少期から現在までの自分の顔の連続性の証明について思いを巡らせたりと、冗談か本気かわからないような愉快さと、なぜか少し物悲しいせつなさも感じられる、素晴らしい随筆集です。

ライターとしては「こんな文章が書けたらいいのになぁ」と思うことしきりです。ともかく文章がべらぼうにうまい。明治生まれの随筆家らしく、漢文と英語やドイツ語が織り交ざる文体ながら、文章のリズムがとても良く、読んでいて非常に心地いいです。科学と芸術の両方をこよなく愛し、科学を芸術のごとく、また芸術を科学のごとく、親しみやすい文体で語り掛ける寺田寅彦の随筆集を、機会があればぜひ読んでみてほしいと思います。随筆集は全6巻もあり、岩波文庫ですぐ手に入りますが、随筆なのでどの巻数から読んでも楽しいです。

こぶたからのひとこと

ぼく学校では理数系全然ダメだったんだけど、科学と芸術に美しい関係性があると聞くと、興味がわいてくるな~。
寺田寅彦っていう人を知らなかったけど、面白い文章を書く人なんだね!
図書館にあるかなあ

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