天才ではなく稼げるライターになるための一冊

天才ではなく稼げるライターになるための一冊

「稼げるライター」と聞くと、天才を思い浮かべる人は多いでしょう。奇想天外な発想で人を魅了し、そのうえで圧倒的な文章力を兼ね揃えているライターだけが成功すると、無意識のうちにライター志望者は考えてしまいがちです。しかし、おすすめしたい『あなたが今から、プロのライターになる方法 ド素人でも大丈夫!書いて稼ぐための入門書』を読めば、天才ライターと稼げるライターは全く別物だということに気づくでしょう。

独自の発想よりも二番煎じで十分

そもそも、天才とは何かというと「自分にしかできない発想」を持ち、「一つの分野で飛びぬけている存在」と定義していいでしょう。それならば、ライターとして成功している人間の大半は天才ではありません。むしろ、凡人と呼んでもいい人が圧倒的です。しかし、誤解してほしくないのは凡人だからといって文章が面白くないというわけではないのです。

現実には天才として持てはやされている人よりも、凡人の書いた文章のほうが多くの読者を獲得することは珍しくありません。なぜならば、凡人は自分からオリジナルの発想を生み出さない代わりに、世間のニーズを的確にリサーチして大衆が「読みたい」と思えるような企画を提供できるからです。それゆえに本書では「二番煎じ」であることを肯定します。

すでに成功が約束されている企画の二番煎じだからこそ、読者は飛びつきます。見たことも聞いたこともない題材の記事よりも、トレンドについての記事のほうが世間の期待は高いのです。ライターとして成功するためには、自分の中から新しいものを生み出す天才よりも、世間の中から新しいものを見出す凡人を目指すようにしましょう。

文章や執筆プロセスを見直すきっかけに

精神論や観念論ではなく、実践的なライター講座になっているのも本書の大きな魅力です。たとえば、「分かりやすい文章を心がけよう」という論旨の中で「こそあど言葉」に代表される指示語を減らすように本書は指南します。指示語は文章を曖昧にし、読者に読みづらさを感じさせます。文章は具体的かつシンプルなほうが読者から支持を得られるのです。

また、同義語の反復を禁止したり、文章の展開を激しくしないために接続語の多用を注意したり、本書の教えはどれも的確ですんなり頭に入ってきます。中でも目から鱗なのは、執筆よりもむしろ取材の過程を大切にしよう、という項目ではないでしょうか。多くのライターは文章に頭を悩ませ、文章で他のライターよりも差をつけようと考えます。

しかし、実際に記事の品質を保証するのは執筆段階よりも取材段階だと本書は説きます。時間をかけて対象を取材することができれば、質の高い記事を書くことができるのです。ライターとは文才のある人が技術を披露する仕事ではなく、読者の読みたいものをしっかりと届ける仕事だということが本書を通じて理解できることでしょう。

ライターを「職業」だと強く意識する

ライターは資格も免許もなく、自称すれば誰でもなれてしまうので職業意識が希薄になっている人もいます。だからこそ、職業意識を強く持って仕事をこなしていけば、ライバルと差がつけられて稼げるライターになります。「良い文章を書けば仕事は増える」と悠長にかまえるのではなく、ときには自分を売り込む営業力が求められる瞬間もあります。本書は文章力のみならず、生活面からもライターとしての成功術を叩き込んでくれるのです。

いかなる仕事でも成功する人は成功するための思考回路を持っています。ライターでもそれは変わりません。好きな文章を好きなように書いて成功するライターなどごく一部です。どうすれば業界に残って稼げるのかを逆算し、意識を高く持って稼げるようになりましょう。

今回紹介した本について

  1. 書籍名:あなたが今から、プロのライターになる方法 ~ド素人でも大丈夫!書いて稼ぐための入門書~
  2. 著作者:臼井 隆宏

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みんなの感想文

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  • 言葉を選ぶセンスや表現などは才能が左右すると思っていただけに「稼げるライター」は凡人が多いということに驚きました。「書く」だけでなく取材などの下調べをしっかりすることが質の高い記事を書くためには必要だということも理解できました。ライターとしてやっていくために必要なことが紹介されている本を読んでみたいと思います。
  • 私はなんとなく「文章がうまいこと」=「良いライターである」と思っていました。ですが、「文章がうまい」という一文にも色々な意味かあり、ライターとしての文章はより多くの人にとって読みやすいものであることが挙げられるということを知ることができました。一見文章力とは関係のないように見えることも意識できるよう、紹介されている本を参考にしたいと思います。
  • 稼げるライターとは天才ではなく凡人という言葉にはっとされました。今までは自分には特に才能もないし稼ぐなんて難しいと思っていましたが、凡人だからこそ作れる文章や言葉で地道に実績を作っていこうと感じました。
  • ライターとして活動する上で必ずしも並外れた才能が必要ではないという説明は、現実的で説得力がありました。特に、個性的な文書を執筆するライターよりも、読者に読まれやすい文章を書くことが大切であるという解説は、非常に参考になりました。
  • ライターとして成功するためには成功できるような思考回路が必要ということに納得しました。確かに好きな文章だけを書いても読む人が楽しくないと意味がないです。今まで好きなように書いても成功できると思っていたのですが、これからは世間のニーズを考えて役立つ文章を書きたいと思います。
  • 文章を書くことに対して少なからず苦手意識を持っています。しかし、この書評では、「凡人を目指す」や「二番煎じで十分」といった斬新なライター像が提示されていました。ライティングの参考になりそうで非常に興味を持ったため、記事で紹介されている本を読んでみたいです。
  • 私もライターとは、誰が読んでも感心するような天才的な文章力が必要だと思いこんでいました。しかし、平凡な人間でも良いと知りほっとしました。お勧めの本もぜひ読んでみたいと思います。ありがとうございました。
  • 世間の中から新しいものを生み出す、という発想は確かにそのとおりだなあと思いました。仕事で書く場合は特殊なことではなく、広くいろいろな人にリーチする文章を書かねばなりませんから、そのとおりだと感じました。
  • 天才的な文章を書くよりも、ニーズのある文章を二番煎じでもいいから書く、という斬新な発想はとても興味深く一度目を通してみたいと思える本です。文章を書いて生計を立てたいと思っているならなおさら読まなくてはならないのでは、と思わされました。
  • ライターは憧れの職業ですが、文才がないとなれないものだと思っていました。でもこの記事を読んで、才能よりも、しっかり取材をして読者に分かりやすい言葉で伝える事が重要だという事が分かりました。小説のような物語ではなく、誰が読んでも分かりやすい言葉で書いていきたいと思いました。
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