読者に伝わる文章をものにするための一冊

読者に伝わる文章をものにするための一冊

ライターとして成功するためには分かりやすく、読み手を選ばない文章を書くことが大切です。しかし、多くの人が上手な文章と分かりやすい文章を混同してしまっています。『「分かりやすい文章」の技術―読み手を説得する18のテクニック』をおすすめに選んだのは、本書を読むと分かりやすい文章の意味が深く理解できるからです。ライター初心者がステップアップしていくうえで、本書は心強い味方になってくれるはずです。

芸術文と実務文の違いとは

ライター初心者でありがちなのが、時間をかけて執筆したこだわりの文章を「分かりにくい」とダメ出しされてしまうケースです。そんなとき、おそらくは多くの人が「何が悪いのか理解できない」と思ってしまうのではないでしょうか。もしかすると、その文章は日本語としては美しく、技術が高いものだったのかもしれません。しかし、文章には状況によって必要とされる文体があることを知っておきましょう。本書では、文章には「芸術文」と「実務文」があると解説しています。芸術文とは詩や小説などで用いられる文体です。芸術文は難しい比喩や、哲学的な言い回しで読者の感性を刺激します。解釈を読者に委ねていることが多いのも特徴です。

一方、実務文はニュース記事などで用いられる文体で、分かりやすく事実を歪めないで伝えることが重要視されています。比喩や凝った言い回しを使うと読者の想像をいたずらにかき乱してしまう可能性があるため、実務文では避けられる傾向があります。そして、小説家を目指すならともかく、ほとんどの職業ライターに求められている文体は芸術文ではなくて実務文のほうなのです。

目的を達成する文章を心がける

実務文とは「目的を達成する文章」と言い換えることが可能です。たとえば、ある人が失恋して悲しいという情報を文章にするとします。芸術文であれば、悲しい心情を天気に例えるなどして、読者の感性を刺激することでしょう。優れた文章表現を味わうことができれば、情報が曖昧に伝わっていても読者にとっては大きな問題ではないのです。

しかし、実務文であれば情報が正確に伝わっているかどうかが全てです。誰が誰に対していつ失恋したのか、そして、今どんな気持ちになっているのかを誤解が無いように伝えることが実務文の目的です。どうして実務文を書ける人が少ないのかというと、実務文を教わる機会があまりにも少なかったからだと著者は説きます。なぜか学校の授業で教えてくれる文章は芸術文ばかりで、大人になってもビジネス文書などの実務文に苦労する人が多いです。本書では実務文が難解なものではなく、考え方次第で誰でも身につくものだと教えてくれます。具体的な注意点を分かりやすく挙げてくれるので、本書を読み通した暁には実務文が苦手だった人も克服できているのではないでしょうか。

ライター初心者の参考になる

本書は壁に当たってしまったライター初心者の参考になります。美しい文章を書けば反響を得られると思っていたのに実際はダメ出しされてばかり、そんなライター初心者は実務文を心がけて執筆してみましょう。もちろん、ライターの中には芸術文を記事に取り入れて成功している人もいます。しかし、そんなライターは世間で評価を確立したごくわずかな人たちです。まずは、与えられたテーマを正確に描写する実務文を身につけることが肝心です。そうしているうちにダメ出しが減り、安定して仕事を受注できるようになれば個性的な文体を発揮しても読者がついてくるようになるでしょう。プロのライターの文章は好き勝手に書いていい作文ではなく、読者に伝わらなければ無意味です。本書はそんなライターの心構えを伝えてくれます。

今回紹介した本について

  1. 書籍名:「分かりやすい文章」の技術―読み手を説得する18のテクニック
  2. 著作者:藤沢晃治

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