<引用するにはどうしたらいいの?>ライターならば知っておきたい!著作権にまつわる初歩的な事項 シリーズ(3/3)

<引用するにはどうしたらいいの?>ライターならば知っておきたい!著作権にまつわる初歩的な事項 シリーズ(3/3)

記事を執筆するとき、さまざまなサイトに飛んで類似記事から情報を収集しますよね。同様のテーマについてどのような記事がネット上に存在するのかを見て回ることは、クライアントや社会の求める傾向を知るうえで有益なので、大いに参考にすると良いでしょう。

しかし、他サイトで掲載されている文章を無断でそのまま転用することは許されないことです(厳密にいえば、著作権侵害となるのは転用する元の文章が著作物として認められる場合だけですが、著作物か否かの判断には困難が付きまとうので、基本的に許されないと考えてください)。

では他サイトの文章を利用して記事を書きたいけれど、その文章の著作者と連絡をとる手段がないという場合、どうしたらいいのでしょうか?

他の人の文章を利用してより良い文章に!?そもそも「引用」ってなに?

著作権法上、特に権利者に断らずに他人の著作物を利用できる場合が定められています。そのひとつが今回ご紹介する「引用」です。ではまず条文を見てみましょう。

 icon-caret-right 著作権法32条1項

公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

この「引用」という文言の解釈について、裁判所は次のように述べています。

引用にあたるというためには、引用を含む著作物の表現形式上、引用して利用する側の著作物と、引用されて利用される側の著作物とを明瞭に区別して認識することができ、かつ、右両著作物の間に前者が主、後者が従の関係があると認められる場合でなければならない(最高裁1970年3月28日第三小法廷判決)。
噛み砕いていうと、「どこが他の人の文章なのかわかるようにしてくれれば(明瞭区別性)、補充的な資料として(主従関係)利用することを引用として許容しますよー」ということです。報道、批評、研究といった目的が例示されているように、「引用」として本来想定されているのは、次のような場合です。
(1)私は~~(メイン)~~と考える。この件について長年研究してきたA氏もまた「~(サブ)~」と述べている。
(2)私は~~(メイン)~~と主張したい。これに対し、B氏は「~(サブ)~」と批判するが、この点については~~(メイン)~~という観点から反論できる。

記事執筆の労力を削減するために他人の文章を勝手に拝借することが引用として認められているのではなく、自己の主張を補強するために他人の文章を利用することが認められているのですね。

7つもある!「引用」として認められるための必要条件

適法な引用として認められるためには、他にもいくつかの条件を満たすことが必要です。

まず、著作権法32条1項は「公表された著作物」を対象としていますので、既に公表されているものであることが必要ですね。これはネット上で不特定多数の人々の目にさらされている文章を利用するのであれば問題なく満たすでしょう。加えて、「公正な慣行に合致すること」、「引用の目的上正当な範囲内であること」が必要なことも条文からわかりますね。また、著作権法48条1項1号によって、出所を明示しなければならないと規定されています。そして、注意すべきなのが「必然性」という要件です。

必然性といわれると、日常的には「どうしてもなければならない」という強い要求をイメージしますよね。しかし、ここでは相応の必要性があればいいとされています。

参照URL:著作権なるほど質問箱
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/naruhodo/answer.asp?Q_ID=0000581

たとえば美味しい煮付けの作り方の記事であったはずなのに途中ギターの写真が紛れていた(ギターの写真に何の意味があったのかわからない)といった事態を防ぐためのものだと考えてください。

さて3回にわたって著作物、著作権、引用方法についてご説明してきました。わかりやすかった、と思っていただけたなら幸いです。このようなスペースをくださったサグ―ワークスさんに感謝します。

こぶたのまとめ

他サイトに掲載されている文章を利用したい!→「引用」すれば著作権侵害には該当しない。

【要件】

  1. 既に公表されているものであること
  2. 公正な慣行に合致すること
  3. 報道や批評や研究といった正当な範囲であること
  4. 本文が「主」に対して引用部分が「従」の関係であること
  5. 引用部分が明確なこと
  6. 引用しなければいけない相当の理由があること
  7. 出所の明示があること

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