<著作権を侵害するって?>ライターならば知っておきたい!著作権にまつわる初歩的な事項 シリーズ(2/3)

<著作権を侵害するって?>ライターならば知っておきたい!著作権にまつわる初歩的な事項

私が最初に学んだのは日本の著作権ではなく、アメリカの著作権でした。あれから7,8年が経ち、ようやく日本の著作権についても基本的な事項はマスターできたつもりでいます。今回のテーマは「どんな行為をすると著作権を侵害したことになるのか?」です。

私たちライターに認められる著作権・著作者人格権

さて少し前回の復習をします。著作物とは、簡単に言えば「ありふれたものでなく、個性が発揮された表現物」でしたよね。小説家やイラストレーター、そして私たちライターのように著作物を創作する人は著作者です(著作権法2条1項2号)。著作者は、著作権及び著作者人格権を有します(同17条1項)。財産的な側面についての権利の総称を「著作権」、人格的な側面についての権利の総称を「著作者人格権」と呼びます。1つの特定の権利を著作権、著作者人格権と呼ぶわけではないんですね。
ライターの執筆した文章についていえば、コピーしちゃダメ!(複製権)、コピーを配っちゃダメ!(譲渡権)、翻訳しちゃダメ!(翻訳権)、脚色しちゃダメ!(翻案権)等といった権利が「著作権」として認められています。

著作権一覧

 icon-angle-right 複製権
著作物を印刷、写真、複写、録音、録画などの方法によって有形的に再製する権利
 icon-angle-right 上演権・演奏権
著作物を公に上演したり、演奏したりする権利
 icon-angle-right 上映権
著作物を公に上映する権利
 icon-angle-right 公衆送信権・公の伝達権
著作物を自動公衆送信したり、放送したり、有線放送したり、また、それらの公衆送信された著作物を受信装置を使って公に伝達する権利
 icon-angle-right 口述権
言語の著作物を朗読などの方法により口頭で公に伝える権利
 icon-angle-right 展示権
美術の著作物と未発行の写真著作物の原作品を公に展示する権利
 icon-angle-right 頒布権
映画の著作物の複製物を頒布(販売・貸与など)する権利
 icon-angle-right 譲渡権
映画以外の著作物の原作品又は複製物を公衆へ譲渡する権利
 icon-angle-right 貸与権
映画以外の著作物の複製物を公衆へ貸与する権利
 icon-angle-right 翻訳権・翻案権など
著作物を翻訳、編曲、変形、翻案等する権利(二次的著作物を創作することに及ぶ権利)
 icon-angle-right 二次的著作物の利用権
自分の著作物を原作品とする二次的著作物を利用(上記の各権利に係る行為)することについて、二次的著作物の著作権者が持つものと同じ権利

参照URL:http://www.cric.or.jp/qa/hajime/hajime2.html

一方、無断で公開しちゃダメ!(公表権)、公表に際して著作者の意向に反する名義に変えちゃダメ!(氏名表示権)、内容を変えちゃダメ!(同一性保持権)といった3つの権利が「著作者人格権」として認められています。

著作権は譲渡することができますので、著作者以外の人が保持していることもありますが、著作者人格権は著作者だけのものなので譲渡できません(念のため付言しておきますが、著作権を譲渡したからといって著作者が変わるわけではありません)。

友人の詩を無断でネットにUPするとどうなるの!?

何か著作物を表示した方が分かりやすいと思うので、私の友人(村島モモ)が作成した詩を拝借してきました。

最初は知らなかった、この感情の名前を――。
ふんわりあったかくて、くすぐったいような、愛おしいもの。
これを胸に抱いて過ごせるだけでよかった、何も望まなかった。
なのに……、それは何の前触れもなく、痛みに変わった。
ちくちく、ちくちく、ちくちく。
その痛みが体を貫くとき、視線の先にはいつもあの2人がいた。
この感情の名前、それは――――。

著作者は村島モモなので、彼女が著作権、著作者人格権を有します。もし私がモモの同意なく勝手にこうして公開していたら、どうなるでしょうか?コピーをしているので複製権を侵害したといえ、また、ネットで多くの人の目に触れる状態にしているので公衆送信権を侵害したことになります。

通常1つの行為で複数の権利を侵害していることになるのが著作権法の特徴だと思います。さらにもし私が一部を変更していたら同一性保持権の侵害に、村島モモの名前を書かなければ氏名表示権の侵害になります。彼女の同意の下、すでにネット上で公開されているものなので、公表権を侵害することはありえません(公表権で保護されるのは未公表のモノ、公表されていたとしても公表に際して著作者の同意を得ていないモノに限られます)。

意外と怖い著作権。損害賠償請求に差止請求に謝罪広告!?

私がモモから同意を得ずにこうして彼女の詩を公開しているとすると、私はモモの著作権、著作者人格権を侵害していることになります。この場合、モモは私に対して、「詩を掲載しないでよ!」と主張することができます(そうなったら、私はサグ―ワークスに連絡して記事の公開を止めてもらうことになりますね)。これを「差止請求権」といいます(著作権法112条1項)。

現に掲載されているときだけでなく、掲載されようとしている時でも差止請求権を行使することはできます。たとえば私がモモに「あなたの詩を借りて記事を書いたの。承認してもらったし、今度の月曜日にでも公開されると思うよ」と言えば、モモは「やめなさい!」と主張することができるのです。そのほか、モモは私がサグ―ワークスから受け取る報酬について、民法709条に基づいて「そのうちのいくらかを渡しなさい!」といえる可能性があります。

もし私がモモの詩を変更していたら、その主張が認められるかどうかはともかく、モモは「あなたの変更で意図が伝わらなくなった!慰謝料払ってよ!」(民法710条)、「あれはあなたがした変更なのだとみんなに伝えて!(謝罪広告を掲載してよ!)」(著作権法115条)と主張することができます。いろいろ主張できるんだな、と感じませんか?1つの行為でいろいろな権利を侵害しかねないので、意外と怖いんですよ。

こぶたのまとめ

著作権、著作者人格権は著作者に認められる権利の総称、著作物に関する利用をコントロールできる権利。
著作権、著作者人格権を侵害すると、著作者から差止請求、
損害賠償請求などを受けることになるので注意が必要!

この記事をシェアする

ページトップへ戻る