<著作物ってなに?>ライターならば知っておきたい!著作権にまつわる初歩的な事項 シリーズ(1/3)

ライターならば知っておきたい!著作権にまつわる初歩的な事項<著作物ってなに?>シリーズ(1/3)

ライターをするうえで最も身近な法律が「著作権法」ではないでしょうか?今回、自らアピールをして記事を書かせていただくことになりました。私が著作権法を学び始めたのは、自分の文章に関する権利について知りたかったからです。もし私と同じように著作権について知りたいと考えているライターの方の知的好奇心を満たすことができたなら幸いです。第1回めは「著作物とは何か」をテーマにさせていただきました。

子どものラクガキも著作物!?

皆さんは著作物についてどのようなイメージをお持ちですか?村上春樹氏が書くような独創的な小説にしか与えられないものというイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、実際には子どものラクガキのようなものであっても著作物として認められています。

つまり、独創性は不要で、個性が表れていれば認められるのです。これを法律的に言うと、著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」となります(著作権法2条1項1号)。

また、著作権法10条1項に「小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物」、「絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物」等とどのようなものが著作物にあたるのか例示がなされています。とはいえ、これはあくまで例示なので、著作物として認められるか否かは、あくまで「思想又は感情を創作的に表現したもの」か否かで決まります。

クイズに挑戦!著作物はどれだ?

ちょっとした問題を出しますので、よければ皆さん考えてみてください。次の文章のうち、最も著作物性が認められる可能性が高いものはどれでしょうか?

(1)「リオデジャネイロオリンピック、陸上の男子400メートルリレーは19日、決勝が行われ、日本は37秒60のアジア新記録で2位となり、銀メダルを獲得しました」というニュース記事
(参照:NHK NEWS WEB)
(2)「昨日、彼氏と別れた。二股かけられてた。夜電話したら彼氏の電話に変な女が出て『諦めな』とだけ言われた。しかも、一方的に切られた。最悪」というブログの文章
(3)「ボク安心ままの膝よりチャイルドシート」という交通標語

(1)のニュース記事について

8月19日、まさか日本がリレーでメダルを獲るなんて、多くの方が驚きましたよね。この日のニュースはこのような記事で賑わっていたでしょう。つまり、それぞれ異なる記者があちこちのニュースサイトで似たような記事を書いていたということです。誰が書いても似たような文章(ありふれた表現)になる場合、その文章は著作物として認められません(著作権法10条2項)。

(2)ブログ記事について

このブログに書かれているのは、このブログ主が実際に体験したであろうことです。「思想又は感情を創作的に表現した」ものとは認められません。この場合、文章の組み合わせに著作物性が認められる余地があるとしても、ほぼ間違いなく著作物としては認められないでしょう。

(3)交通標語について

3は実際に裁判で著作物として認められた事例です(参照:東京高裁平成13(ネ)3427号)。標語なので文字数の制限はありますが、どういった言葉を使うのかについて個性が表れていますよね。

言論弾圧…?なんでもかんでも「著作物」として認めたらどうなるのか

では、次の文章はどうでしょうか?

自社開発したチェックシステムにより、Web上に存在するテキストとの一致率を計測し、コピーコンテンツを省きます。

サグーワークスのスタッフさんはどこに記載されている文章かすぐわかるのかもしれませんが、プラチナライターの方でさえどこにあるかすぐには思いつかないでしょう。失礼を承知で書くと、この手の文章はありふれています。チェックシステムをアピールする際、どうしてもこのような表現になってしまうでしょう。この場合、著作物性は認められません。もしこの文章に著作権を認めてしまうと、どうなるでしょうか?次回説明しますが、著作物として認められるということは、その表現を独占的に使用できるようになるということです。この文章をサグ―ワークスが独占的に使用できたなら……、他社はチェックシステムを説明する手段をなくしてしまうでしょう。それでは過度な保護になりますよね。

著作権を勉強しはじめたばかりの方は「なんでもかんでも著作物として認められる!」と考えてしまいがちです。しかし、今ご説明したように、ありふれた表現は著作物として認められませんし、そのほかレシピも著作物としては認められません(レシピに書かれているのはアイディアであり、思想や感情ではないから)。勉強を続けていると、意外に著作権で保護される領域が狭いことに気づいてガッカリすることもしばしばなんですよ。

こぶたのまとめ

著作物として認められるためには、個性があらわれていればよく、独創性までは不要である。もっとも、著作物として認められる範囲は意外に狭く、ありふれた表現や、思想又は感情を表現したもの等は著作物として認められない。

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みんなの感想文

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  • 著作権の重要性について今回こちらの記事を読んで深く考えさせられました。自分はこれまで著作権に対して甘く考えがちだったので最悪のケースも十分あり得ると把握し今後自分が文章を書く際は気をつけていきたいなと思いました。
  • ライターが直面しなければならないのが、著作権についてです。毎日ライターが頑張っている成果はすべて著作権により保護されています。しかし、著作物に関する見解は分かりにくい部分があります。著作物について詳しく紹介しているのでわかりやすいです、
  • 正直、今までどのようなものが著作物としてみなされるのか、そしてみなされたことがないのかということについてきちんと考えたことがなかったので、新しい発見ができました。著作物だと思っていたものが著作物ではなかったり、逆に著作物だと思っていなかったものが著作物だったりしたので、自分の中できちんと整理したいと思いました。
  • これからは、著作物の問題について敏感になるべきだと思います。なぜなら、パクリや盗作など、あらぬ疑いをかけられないようにするためです。記事を拝読して、あらためて慎重な姿勢が求められることを痛感しました。
  • 著作物に関してとても学べました。特に自分が書いている記事がこのインターネット上に溢れていることを考えると、著作権で保護することがとても難しいと感じます。法律関係にはとても疎い自分ですがとても勉強になりました。
  • 文章を書いているとどうしてもぶつかるのが著作権ですが、この文章を読んで著作物が何かというのがとてもよくわかりました。今までの自分の著作権に関する認識が誤っていたのを知る事ができて、とても有意義な、読んでよかったと思えた記事です。
  • 新鮮だったのは、プロの記者が書いたスポーツの報道記事でなく、子供が応募した交通標語がむしろ著作物となる事でした。著作権法を理解するには、まずどのようなものが著作物となるかを理解しなければならないことに、納得しました。
  • ライティングをする上で、コピペは禁止されています。しかし、著作権となるとなかなかわからないものです。誰かが書いた文章の一部を切り取ることが著作権を侵害するのか、無断引用なのか判断に迷うことですが、ライターであるなら自分の言葉で表現することを心がけたいと思います。
  • 子供の落書き、また交通標語でさえも著作権があるということは知らなかったので、大変参考になりました。また、レシピやニュース記事などは著作権には触れないということを再確認できたので、良かったと思いました。
  • ブログやツイッターなど、個人が書いたものはなんでも著作物だと思っていましたが、そうではないと知り驚きました。自分の書いたものが著作物と認められるように、個性のある文章が書けるようになりたいと思いました。
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