『声優 声の職人』好きなことと仕事の違い

好きなものと仕事の関係を考えよう!「声優 声の職人」

どうせ仕事をするなら趣味や好きなものに関係する職場に就きたいのは当然の心理です。しかし、いざ働いてみると理想と現実のギャップに驚く人もいます。そもそも、趣味として対象に接するのと、仕事として接するのではまったく状況が異なります。社会人なら気持ちの切り替えをどうやって行うかが大切になるでしょう。

この記事では、森川智之さんの「声優 声の職人」という本を通して、好きなものと仕事の関係について解説していきます。

ベテラン声優がプロの思考を伝える!ファンの感覚で仕事はできない

トップ声優が語るプロの矜持

森川智之さんは80年代後半から声優活動を開始し、アニメや洋画吹替などで多数の代表作を持っています。まさに声優界を代表する存在ですが、「声優 声の職人」によれば、森川さんは自身を専業の声優とは定義していません。音楽や舞台など、幅広いジャンルで声を使った仕事をこなし続けています。

そもそも、森川さんのキャリアはナレーションの仕事から始まっており、「キャラクターを演じるだけが声優の仕事ではない」と森川さんは主張しています。森川さんがキャリアを振り返りながら、プロフェッショナルとしての矜持を語っていくのが本書の魅力です。

ファンのまま作品に関わる若手たち

森川さんは長年所属していた事務所を離れ、自身のプロダクションを設立しました。そして、若手向けのスクールも主催し後進の教育にも力を注いでいます。森川さんが若手声優に抱く不満として「アニメやゲームが好きすぎる」点が挙げられています。

確かに、アニメやゲームが好きだからこそ声優を目指すのは自然な心理ではあるのでしょう。しかし、仕事として作品に関わるからには、普通のファンとは違う深い視点が求められます。森川さんは、ファンの感覚を作品に持ち込んでしまう若手に物足りなさを感じずにはいられないようです。

別のジャンルから自分の仕事に必要な技術を学ぼう

好きなだけでは仕事にならない

森川さんは、声優の演技を学ぶためには「いくらアニメやゲームに触れても意味がない」と主張します。なぜなら、アニメには「声優が演じている姿」が確認できないからです。それよりも、直接俳優の演技を目撃できる舞台や映画の方が参考になるそうです。

森川さんにとっては、「演技」にジャンルなど関係ありません。声優も舞台俳優も映画俳優も、役になりきるという面では一緒です。むしろ、違うジャンルの俳優から受ける刺激もあるはずで、狭い世界を進みたがる若手声優の意識を変えたいという思いが本書からは伝わってきます。

好きなものを仕事にするやりがい

森川さんの言葉は、声優界だけにあてはまる内容ではないでしょう。多くの社会人が好きなものを仕事にして、「思っていた世界ではない」と衝撃を受けているのではないでしょうか。単なるファンだった頃は、何も考えずに対象を楽しんでも許されました。

しかし、仕事にしたからにはお客さんのことを考え、会社の利益を考え、面倒な作業も続けていかなくてはいけません。「声優 声の職人」は、好きなものを仕事にする難しさについて言及しています。しかし、どんなにつらい思いをしても、最終的に好きな業界の底上げにつながるのであればやりがいを感じることは可能でしょう。

趣味を仕事にしたら面白くなくなったという人におすすめ

「声優 声の職人」は森川さんを知らない人、アニメやゲームに詳しくない人にも読んでほしい一冊です。特に、好きなものを仕事にしたのに面白さを感じられない人には参考になるでしょう。仕事なのだから、楽しい時間ばかりでなくなるのは当然です。むしろ、楽しさだけを求めて仕事をしていると、ますますモチベーションは下がっていくでしょう。

そんなときは、仕事についてじっくり見直す時間を作るべきです。「アニメの演技を学ぶためには舞台を見なさい」と森川さんがアドバイスしたように、別のジャンルと自分の仕事を比較してみてもいいでしょう。「趣味」から「仕事」に意識が変わったとき、今までは見つけられなかった醍醐味に出会えるはずです。

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