常識をくつがえす!『集中力はいらない』

常識をくつがえす!集中力はいらなかった?

子どもの頃から大人になるまで、何かにつけて「集中しなさい」という言葉をかけられた人は多いのではないでしょうか。宿題をするとき、スポーツに打ち込むとき、仕事をするときなど、その場面はさまざまです。確かに、集中して取り組めば効率よく物事を処理できるような気がするでしょう。

しかし、本書『集中力はいらない』では、タイトルからその概念を打ち破ってきています。今回は、仕事にも役立つ、森氏の『集中力はいらない』の魅力にせまってみましょう。

著者:森博嗣ってどんな人?

著者の森氏は1957年12月7日、愛知県生まれの工学博士です。某国立大学工学部助教授として働いていた経歴があり、その頃に小説『すべてがFになる』でデビューしました。この作品はドラマ化・マンガ化もされています。

その後、小説に限らず新書、エッセイなど数多くの本を出版していて、その数はなんと300冊以上です。特筆すべきは、その歯に衣着せぬ物言いでしょう。炎上してしまいそうな発言もさらりと言ってのけるそのスタイルは逆に多くの支持を集め、デビュー20年を過ぎた今も、根強いファンがたくさんいます。また、著書からは、常識にとらわれない自由な発想を多く感じとることができるでしょう。

原稿が早いことでも有名で、過去には1時間で6千文字が打てるといった発言もしています。それほどたくさんの文字を短時間で書けるなんて、さぞかし集中力があるのだろうと思いきや、本書で森氏は集中力はいらないと言っているのです。「集中しなさい」という言葉をかけられたことはあっても、「集中するな」という言葉をかけられたことがある人は少ないのではないでしょうか。本書のタイトルである「集中力はいらない」という言葉にも、森氏の独特の感性がうかがえます。

あらゆるところから常識をくつがえされる

本書を読み進めていくと、今まで常識だと思っていたことがくつがえされます。例えば、多くの人が当たり前に行っているSNSの問題点であったり、世間一般では良いとされている集中力の欠点であったりを、鋭い視点から指摘してくれます。集中しないことでかえって得られるものがあるのだということを、学ぶことができるでしょう。実際、同じ作業をずっと続けているよりも、気分転換に別のことをした方が、その後の作業がはかどるといった経験をしたことがある人もいるのではないでしょうか。

画一的な教えにのっとって仕事を行っていくと、せっかくの自分の良いところもつまれてしまう可能性があります。そんなときに本書を読むことで、凝り固まった固定観念が打ち砕かれ、新たな風が吹き込んでくるのを感じることができるでしょう。

森氏の実体験を踏まえながら話は進んでいくため、読みやすく、エッセイを読んでいるかのようです。読んでいく中で、こういう考え方もあるのかと目からうろこが落ちる瞬間が、しばしば訪れるでしょう。

仕事のマンネリ化を打破したいなら

毎日の仕事にマンネリ化を感じている、集中して仕事ができないといったことで悩んでいる人は、ぜひ本書を読んでみてください。特に、発想力が求められるクリエイティブ系の仕事をする人にとっては、大きな気づきがあるのではないでしょうか。インスピレーションはじっと集中していても生まれるものではありません。では、どういった思考の中でひらめきは生まれやすいのか、森氏が研究者時代の実体験を踏まえ教えてくれるでしょう。

また、集中の反対である分散的思考から仕事を行うことで、俯瞰してそれぞれの仕事が見られるというメリットがあります。これは、新入社員で目の前の仕事にいっぱいいっぱいになってしまっている人、逆に地位が上になり指示を出す立場になった人、どちらにとっても有意義な話です。

今までの自分の考え方や習慣をいきなり変えるというのは、なかなか難しいでしょう。しかし、少しでもそれを打破したいと考えているのであれば、本書は大変役立ちます。今まであまり触れられることのなかった集中力のいらない働き方を身につけることで、自身が一皮むけるのを体験することができるのではないでしょうか。

集中力にとらわれない働き方を

仕事をしていく上で、当たり前のことに慣れてしまうのは簡単です。また、その方が楽だという考え方もあるでしょう。しかし、新しい働き方をしたい、自分を変えたいと思っている人にとって、本書はきっとプラスに働いてくれます。集中するという、仕事をする上で当たり前に良いことだと思われていた常識を打ち破り、新たな考え方を紹介してくれるでしょう。

それは、仕事だけにとどまらず、ライフスタイルや、今後の人生においても重要な考え方となり得ます。集中力がないと悩んでいる人や、当たり前だと思っている物事が本当に当たり前なのかどうか疑うような人にも、良いヒントを与えてくれるでしょう。森氏という作家を知らなくても、きっと仕事をしていく上でプラスになる1冊です。

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